不動産テックとは?12種類の分類と導入のメリット、活用事例

不動産テックが今、注目を集めています。テックとはテクノロジーのこと。テクノロジーというと、IT化、システム化することと思われがちですが、単にテクノロジーを取り入れるというだけにとどまらないのが不動産テックです。

長らくアナログ業務が幅を利かせており、人員不足にもかかわらずなかなかデジタル化が進まない不動産業界のビジネススタイルを根本から変えることができると期待されています。

そこで、不動産テックとはどのようなものなのか、導入するメリットなどについて詳しく解説します。

不動産テックとは「不動産×テクノロジー」

アメリカではすでに定着している不動産テック。日本でもようやく注目されるようになりました。

不動産テックとは「不動産×テクノロジー」の略です。単純にIT化を推進する、デジタル化を取り入れるということではありません。ITツールを利用しながら、そのテクノロジーの力によって、

  • 業務の効率化
  • 情報の可視化
  • 不動産業界の問題解決

などを目指し、不動産ビジネスの根幹から変えていこうという取り組みです。 ビジネスにおける「DX(デジタルトランスフォーメンション)」とほぼ同じ意味だと考えて良いでしょう。テクノロジーの力で従来の商習慣に変革をもたらし、不動産市場の取引の増加、新たなビジネスモデルの創出も見込めるものです。

不動産テックの重要性

確かに今後どのような業界でもデジタル化が進んでいくことが予想されるため、不動産業界でもIT化が必須であることは間違いないでしょう。

ではなぜIT化を推進するだけでなく、「不動産テック」というものが必要なのか、それにはこのような理由があります。

不動産業界の生産性の低さ

不動産業界は他の業界と比べて労働生産性が低いといわれます。その理由の一つが、デジタル化の遅れなのです。いまだにファックスや電話のやりとりが中心という店舗も珍しくなく、IT化の遅れが顕著な業界の一つです。

情報の非対称性

情報の非対称性とは、売り手と買い手の間で情報の格差があることを指します。日本には「レインズ」と呼ばれる物件情報の管理システムがありますが、これは不動産業者しか利用できません。

消費者は取引に必要な情報を得られないという問題もありますし、情報の登録義務に違反した場合でも罰則がありません。情報の透明性に欠け、消費者は取引に関する知識も不十分なまま事業者に頼った取引を強いられていることになります。

このような状態を是正するためにも、情報のオープン化は不可欠であり、それが透明性の高い市場を確立させることになるのです。ちなみにアメリカには「MLS」という不動産取引のネットワークがあり、業界の独自システムでありながら公開されています。

慢性的な人手不足

少子高齢化の影響でどの業界も人手不足ですが、不動産業界も同様です。国土交通省の「不動産業ビジョン2030 参考資料集」によると、不動産業の年齢構成で60歳以上が占める割合は、2000年時点では3割強でしたが2015年には約5割と高齢化が進んでいます。

社長の平均年齢も61.7歳となっており、今回の調査対象の業界では最高年齢。後継者の不在が課題となっています。人手不足の問題を解消するためにも、不動産テックに注目が集まっているのです。

▼不動産業界の現状についてはこちらの記事も参考にしてください。

不動産テック・3つの分野と12種類のサービス事業

不動産テックは大きく分けると3つの分野があります。

  1. 物件情報の管理
  2. 仲介機能・マッチング
  3. 価格の可視化・査定

そしてさらに12種類のサービスに分けられます。1つずつ、確認してみましょう。

1.VR、 AR

VRは「Virtual Reality(ヴァーチャルリアリティ)」、ARは「 Augmented Reality(拡張現実)」の略です。 VRを導入すれば、現地に足を運ばなくても内見ができるようになります。遠方に住んでいる人でも案内できますし、往復の時間も節約できるので効率的な営業活動が可能になります。

ARはデータを合成する技術で、家具の配置のシミュレーションなどができるようになります。実際に家具を置いてみた時の印象の違いなどを示すことができるので、成約率アップにも役立つでしょう。

▼VRについてはこちらの記事も参考にしてください。

2.不動産情報

物件情報を一つに集約するポータルサイトの活用や物件情報の登記情報をデータベース化して業務に活用する取り組みもあります。ユーザーの利便性が向上することはもちろん、登記情報を取得しやすくなるので、業務の効率化にもつながります。

3.仲介業務支援

買い手と売り手をつなぎ、買い手のニーズにマッチした物件を見つけるためのサービスです。営業活動を効率化することを目的として、顧客情報の管理や営業支援をデジタル化するものです。

4.管理業務支援

  • 不動産の契約締結に関わる業務
  • 空室の募集
  • 入居者のクレーム対応

などを管理するシステムです。

管理業務支援には、売買や賃貸契約時の重要事項説明をオンライン上で行うIT重説の支援ツールも含まれています。対面でなくてもできるようになるため、遠方にいる顧客が移動する時間も節約できますし、お互いのスケジュール調整もより簡単になるでしょう。

5.IoT

IoTとは「Internet of Things」の略で、直訳するとモノのインターネットとなります。

  • スマホで鍵の開閉をする
  • 不動産の状況を確認するWEBカメラ
  • 入退室管理システム

など、インターネットを通じて機器を管理するシステムのことです。

6.ローン・保証

ローンの金利の計算は素人には分かりづらく、借り換えの計算も面倒です。そこで、簡単にシミュレーションできるサービスが登場しています。ローンや保証サービスの比較が簡単になり、自分に適したものを選べるようになります。

7.クラウドファンディング

クラウドファンディングとは、インターネット上で投資、出資を募る仕組みですが、これを不動産投資に利用します。一般的に不動産投資は高額となるため、複数から投資を受けられれば、一人当たりの投資額も小さくなり、個人投資家でも少額から投資に参加できるようになります。

8.価格の可視化・査定

多数の物件情報を収集し、そのビッグデータを元にしてAIを利用した不動産価格や賃料を査定するほか、

  • 賃料の分布
  • 将来の賃料の変化
  • 人口の予測

など、将来的な見込みも解析するサービスです。

9.スペースシェアリング

使っていないスペースを有効活用できるよう、空室や空き駐車場などの情報をもとに使いたい人と貸したい人をマッチングするサービスです。

  • シェアオフィス
  • シェア会議室
  • イベントスペース
  • 空き部屋の一時利用

などの情報を提供します。

10.リフォーム・リノベーション

リフォームしたい人と、リフォーム業者をマッチングするサービスです。国や自治体も中古物件をリフォーム・リノベーションして利用することにも力を入れていますので、今後も注目される市場です。不動産テックを活用することで既存物件を効率的に活用していけるでしょう。

11.マッチング

不動産に関わるさまざまな人たちをマッチスングするサービスにも、不動産テックが活用されています。

  • 家を売りたい人と不動産会社
  • 物件の所有者と借りたい人
  • リフォーム業者と税理士
  • 不動産業界で働きたい人と不動産会社

などが一例ですが、不動産業界内でのマッチングのほか、工事の受注や相続に関することなど多様なカテゴリーに関するサービスが展開されています。

12.物件情報・メディア

不動産情報をメディアに掲載し、一般の消費者が見たい、買いたいと思うようなサービスを提供することも不動産テックの一つです。情報の提供方法はさまざまで、専門家によるアドバイスや海外の事例など、顧客に役立つ情報を掲載します。

不動産テックを導入するメリット

不動産テックを導入することで、このようなメリットが考えられます。

労働生産性の向上

手作業で行っていたことを機械化することで業務を効率化できること、それによって少ない人手でも無理なく仕事を回せるようになります。今後、人口の減少により労働者の数も減っていきます。

機械ができることは機械に任せ、自動化できる仕組みを今から導入することは不可欠といえるでしょう。

情報の透明化

ポータルサイトで物件情報の一部は見れるものの、一般の人が得られる情報には限りがあります。良い物件だと思って問い合わせをしたが、実はすでに募集が終了しているおとり物件だったなどというトラブルもあり、情報の透明化は急務です。

不動産テックによって常に最新の情報を提供し、お客様に役立つ情報を提供するデータベースによって健全な取引ができるようになるでしょう。

不動産テックの活用事例

では、具体的にどのような導入事例があるのか、実際に活用されているシステムをご紹介します。

AIが最適化!プロ並みの写真撮影

物件の写真は重要です。第一印象が悪いと問い合わせにも繋がらず、成約率にも大きな影響があります。かといってプロの写真家を呼ぶわけにもいかず、一眼レフで写真を撮ろうとするとそのレベルのカメラを適切に取り扱えるスタッフも少ないため、いい写真が撮れないと悩んでいる担当者も多いと思います。

「NODALVIEW(ノダルビュー)」は、スマホで簡単に360°の撮影ができるアプリで、撮った写真はVR内見に使うこともできます。AIが自動で写真を合成してくれるので、白飛びも防げます。誰でもハイクオリティな写真が撮影できるのです。

登記情報取得の業務時間を削減

登記情報の取得に時間とコストがかかるとお悩みなら、ホームズの「オンライン登記情報システム」を利用すれば、不動産の登記情報を一括で取得できるようになり、大幅な時間の節約が可能です。

また、取得した情報を手作業で面積の計算などを行っている人も多いと思いますが、オンライン登記情報システムを利用すれば全ての作業が自動化され、登記情報を活用する工程が大幅に短縮されます。

積極的にZoomを活用

Zoomは会議だけに使うものではありません。お客様との打ち合わせにも活用できます。お部屋の動画を見ながら説明をしたり、契約内容を確認してもらったり、事務所に足を運んでもらわなくても契約を進めることが可能になります。

スマート宅配ポスト

従来の宅配ポストですと、荷物が来ているかどうか開けてみないとわかりません。スマートポストなら、荷物が届くとスマホに通知がきます。また、カメラ機能で投函の様子などをリアルタイムで確認できるので不在時でも安心です。

まとめ:不動産テックで業務を効率化し新たなビジネスを展開

不動産テックは、単なるIT化にとどまらず、不動産ビジネスを根幹から変えていくものです。業務の効率化はもちろんのこと、今後確実にやってくる人手不足にも柔軟に対応できるようになるでしょう。

現在は、一般消費者は限られた情報しか入手できませんが、一元的なデータの管理ができるようになれば情報の透明化にもつながり、よりその人に有益な情報を手にすることができるようになるはずです。

VR内見やマッチング、スペースシェアリングなど12のカテゴリーでIT化が進められていますが、ツールを導入するだけでなく不動産業界の仕組みから見直していくことで、新たなビジネススタイルを創出していけるでしょう。