不動産業界は働き方改革が必須!人材不足解消のために今すべきこと

 コラム 2022.10.28

どの業界も人材不足が問題となっていますが、その中でも特に不動産業界は抱えている問題は大きいのではないかと思います。

人手不足からの長時間労働という流れを断ち切らなくては、離職率は高まる一方です。これから労働力人口が減少の一途をたどる中で、今動かなければ、手遅れになりかねません。

人手が十分にあった頃は、どうやって売り上げを上げるのかを考えていればよかったのですが、時代は変わりました。これからはもっと人が働きやすい環境を整え、誰でも自分の生活を大事にしながら仕事ができる会社にならなければ生き残れないでしょう。

不動産業界が今抱えている課題やどうすれば働き方改革ができるのか、どのような波が押し寄せても生き残れる会社になるためにできることを考えていきましょう。

今の不動産業界には働き方改革が必要!

過労の男性

働き方改革の法案が施行されたのは2019年、3年経った今、労働環境はどう変化したのでしょうか?働き方改革では、長時間労働の解消が課題の一つに挙げられていますが、不動産業界は残業時間が多いことも問題になっています。

課題がわかっているのに改革できないのはなぜなのでしょうか?まず、不動産業界が今抱えている課題を見つめ直し、本気で働き方改革をしようという気持ちを持つことが大切なのではないかと考えます。

離職率を下げることが急務

令和2年の不動産業界の離職率は14.8%でした(厚生労働省「令和2年雇用動向調査結果の概要」)。宿泊・飲食サービス業の26.9%ほどではないですが、およそ15%の人が辞めてしまうというのは、決して低くない数字です。

人を育てるには時間も手間もかかります。それなのに、せっかく育てた人が辞めてしまうということは、それまでかけたコストが無駄になるということです。

生産性を上げるためには、辞めずに定着してもらうことが必要ですから、どうすれば辞めないのか、この仕事を続けていこうと思えるのかを考えなくてはならないでしょう。

少子高齢化でこれからどんどん労働力人口は減っていきます。優秀な人材の取り合いになっていきますから、一度つかんだ人を離さない対策が急務です。

残業も多い不動産業界

パーソル総合研究所が東京大学の中原准教授と行った共同研究の中で、会社員6,000人を対象に残業時間を調査したデータがあります。その中で不動産業界は4位にランクインしました。

月に平均で21.6時間、繁忙期で31.78時間となっていますが、これでは定時に帰れる日がほとんどなさそうです。

サービス残業が多いともいわれていますから、実際にはこれ以上の残業をしている可能性もあります。

昔と違い、ライフワークバランスを重視する人が増えています。

がむしゃらに働いて大金を稼ぐよりも、生きがいややりがい、趣味などお金以外の部分を大切にして生きていこうという傾向がありますから、最初から残業が多いとわかっていて「この業界に行こう」と思う人はいないでしょう。

魅力ある職場作りには、なんとしても残業時間を減らすことが求められます。

テレワーク導入が遅れている不動産業界

不動産業界はIT化が遅れているといわれています。その証拠にテレワークの導入も遅れていて、他業種に大きく溝をあけられています。

総務省の調査「令和元年通信利用動向調査報告書」によりますと、不動産業界のテレワーク導入率は25.4%となっています。

その2年前、平成29年がわずか9.5%でしたので、その頃と比較すれば2倍以上にはなりました。しかし、金融・保険業の40.7%、情報通信業の46.5%と比較しますと、かなり低い水準であるといわざるを得ません。

たとえば、飲食業のようにテレワークが難しい仕事であれば仕方ないですが、不動産業界は接客も含め、テレワークが可能です。それにもかかわらず導入しないのは問題です。

ちなみに、情報通信業は離職率が9.2%と不動産業界のおよそ6割程度にとどまっています。IT化やテレワークの導入は離職率にも影響がありそうです。

不動産業界の働き方改革にはIT化が必須

働き方改革、特に長時間労働の解消にはIT化が必須です。初期費用がかかったとしても、その分業務を効率化できればコストが削減できてプラスを生み出せます。

対面でなくても接客はできる

お客様の相談対応は、電話だけではありません。今はむしろ、メールやチャットを利用したい人が増えているのですから、お客様の要望に応えられるよう、さまざまなツールを導入すべきです。LINEやZoomを導入するくらいなら、大した費用はかからないでしょう。

内見もオンラインでできるようにすれば、忙しい人が利用しやすくなります。現地にお客様を送る時間が節約できますから、その分違う仕事に時間をかけられます。対面ありきではなく、IT化でより良い接客を目指そう!と意識を変えていく必要があります。

▼オンライン接客についてはこちらの記事も参考にしてください!

紙や手作業を極力なくそう

いまだにファックスや紙の伝票を使い、すべての業務が手作業という会社は少なくありません。しかし、本気で社員のこと、会社のことを考えるなら、機械にできることは機械に任せるべきです。人は、人にしかできないことに時間を割くべきでしょう。

年代を問わず、「パソコンは苦手…」という人がいますが、慣れていないだけです。IT化に対して抵抗感があるなら、まずは慣れるところから。業務に必要なシステム導入に関する研修などを開いて学んでいけば良いことです。

▼不動産テック活用事例についてはこちらの記事も参考にしてください!

意外と面倒な車両の管理をなくす

お客様を物件に案内するときなどは車を使いますから、不動産仲介の仕事には車が必須です。しかしこの車の管理についても、車両の点検、駐車場の管理などこまごまとした業務が発生します。これももちろん、コストがかかっています。

接客がオンラインでできるようになれば、車をゼロにするわけにはいかないにしても、台数を減らすことは可能です。

また、車の管理業務も人の手ではなくシステムを活用して行うようにすれば、時間も手間も削減できるでしょう。無駄な手間、時間を極力無くす方法を真剣に考えることが生産性の向上につながります。

最初からできないと思わずに、どうすればできるかを考えればきっと良いアイディアが出てきます。

休暇の取得など労働環境を整備することも必要

不動産業界の働き方改革に必要なのはIT化だけではありません。定時に帰ろう、休暇を積極的に取ろうと意識を変え、職場の環境を変えていくこともとても大切なことです。

日本人は空気を読むことを重視する傾向があります。帰りたいと思っても帰りづらい雰囲気の会社だと、定時を過ぎているのに退社することを躊躇ってしまう人が多いでしょう。周りが休んでいないと、自分だけ有給を申請しづらいと感じる人もいます。

このような環境を変えるためには、管理職が積極的に動かなくてはなりません。1日、10分でもいいです。仕事の時間を短縮する方法を考え、計画的に休暇を取るようにします。そして、部下にもそれを促してください。

仕事なんてさっさと片付けて帰ろう、みんなで交代して休もうという環境づくりをすることで、残業も離職者も減っていき、働きやすい会社になるのではないでしょうか。

長時間労働は「美しくない」という意識を持つことが大事

仕事中の不動産会社スタッフ

上司がかつてのモーレツ社員だった場合、残業をたくさんすることが偉いと勘違いしていることが多々あります。

上司がいる間は部下も帰らない、体調が悪くても休まないというような、昭和のモーレツ社員はもはや時代遅れだということを理解してもらわなくてはなりません。

小さな会社ほど社長や上司の行動が部下に与える影響は大きく、会社全体が残業を断れない雰囲気になってしまっていることがあります。「自分が若かった頃は」といかに大変な思いをして仕事をしたかという話をする人もいるかもしません。

しかし、今は令和。時代は変わったのです。長時間労働をすることは決して褒められたことではなく、生産性を高め、定時に帰れる職場を作ることが、長い目で見たら会社のためになるはずです。

不動産仲介の場合、閉店間際にお客様が来店されて話を聞かざるを得なくなったなど、お客様の都合で動くことが多いと思います。

しかしそれも、相談を予約制にする、LINEやZoomなどオンラインを駆使して気軽に相談できる体制を整えるなどの工夫で対策できるでしょう。

行動しなければ現状を変えることはできません。残業ありきの仕事をするのではなく、どうすれば定時に帰れるのかを真剣に考え、業務を根本から見直していくことが求められます。

まとめ:不動産業界の働き方改革はIT化と意識改革をセットで行う!

不動産業界は慢性的な人材不足と長時間労働の課題を抱えています。10年後も20年後も会社を続けていくために、今こそ、働き方改革に本気で取り組まなくてはなりません。

そのためには、IT化や労働環境の整備などが不可欠です。不動産業界は、特にIT化の遅れが指摘されていますので、今すぐにでも対策を練る必要があります。

手作業でやっていることをシステム化していくとも大事なのですが、加えて、働く人たちひとりひとりが意識を変えていくことも大切です。

これまでやってきた業界の常識にとらわれず、定時で帰ることや休みを積極的に取ることなど、自分たちで労働環境を良くしていこうという行動が必要です。

より良い環境を作るために、自分たちにとってもお客様にとっても良いことを探っていきましょう。