宅建業の知事免許と大臣免許の違い。免許区分を変える方法も解説

宅建業を行うには免許が必要です。免許には知事免許と大臣免許があり、管轄の違いによって使い分けられています。

では、自分が開業するためにはどちらの免許が必要なのかと迷っている人へ、知事免許と大臣免許の違いについて詳しく解説します。

どちらの免許も有効期限は5年ですが、その間に営業の拠点を変えた場合に免許の区分を変える必要があります。

その場合の手続き方法についてもお話しします。宅建業は免許がないと業務が行えませんので、引越しの際は滞りなく手続きできるように準備をしておきましょう。

宅建業の免許区分・知事免許

宅建業の都道府県知事免許は、1つの都道府県のみに事務所を設置している場合に交付されます。たとえば東京都内に事務所をかまえるなら、東京都知事に免許の申請をします。

事務所や支店の数は関係なく、それが1つの都道府県内に収まっているかどうかで判断します。

  • 本店:新宿
  • 支店:池袋、渋谷、品川、有楽町、上野の5ヶ所

上記のような場合でも、必要なのは知事免許となります。

宅建業の免許区分・大臣免許

宅建業の国土交通大臣免許は、2つ以上の都道府県にまたがって営業する場合に必要となります。たとえば、このような場合です。

  • 本店:新宿(東京)
  • 支店:厚木市(神奈川)、さいたま市(埼玉)浦安市(千葉県)

ここで重要なのは、支店が他県にあるからといってすべてが大臣免許になるとは限らないという点です。

大臣免許は宅建業を行うために必要な免許ですから、支店が他県にまたがっていたとしても、宅建業を行っていなければ知事免許で良い場合があります。

上記の例でいいますと、宅建業務を行っているのが本店(新宿)のみで、支店では行っていない場合、知事免許で良いということです。

注意が必要なのは逆のケースです。宅建業はさいたま支店のみ、他の支店や本店では別の業務を行っていたとします。

その場合でも、登記上は本店も宅建業務を行う事務所としてみなされています。ですから免許を申請する際は、大臣免許を申請することになります。

宅建業の知事免許・大臣免許の違い

知事免許と大臣免許は、都道府県をまたいでいるかそうでないかという違い以外にも、このような違いがあります。

免許の申請費用

免許の申請には費用がかかります。

  • 知事免許:33,000円
  • 大臣免許:90,000円

もし、免許の申請手続きを行政書士に依頼する場合には、その手数料もかかります。なお、免許を更新するときの費用はどちらも33,000円です。

免許の審査期間

大臣免許の方が審査する店舗の数が多いですから、審査にも時間がかかります。知事免許ならだいたい30日〜40日程度で免許が交付されますが、大臣免許は100日ほどかかります。

3倍ほどの時間がかかりますので、事業を始めるにはこの期間も加味してスケジュールを立てなくてはなりません。

有効期限はどちらも5年

知事免許と大臣免許の大きな違いは、事務所が1ヶ所のみか、複数の都道府県にまたがるかという点ですので、事業の内容に差があるわけではありません。

ですから、有効期限はどちらも同じ5年となっています。

事務所の数は関係ない

知事免許のところでもお話ししましたが、どちらの免許を申請すべきかは、事務所の数ではなく、「どこにあるか」です。

事務所が100ヶ所あっても、それが東京都内にしかなければ知事免許、2ヶ所しかなくても東京都と神奈川県にそれぞれあるなら大臣免許です。

免許の区分を変える場合

不動産屋の看板

最初は1つの都道府県でスタートした事務所でも、事業の拡大によって営業の範囲を広げていくことがあると思います。またその逆の、複数の都道府県にまたがっていた事務所を一つにするパターンもあるでしょう。

あとから事務所の数を変更する場合の手続きについて説明します。

開業後、事務所を増やす場合

東京で開業をして、その後、同じ東京都内に事務所を増やす場合は、東京都知事免許の変更申請を行います。

事務所が増えるので免許の内容を変更しなくてはなりませんが、知事免許であることに変わりはありません。

しかし、東京以外に事務所を開く場合は大臣免許への免許替え申請を行います。免許替えといいつつ、新たに大臣免許を取得する手続きとなりますので、期間が100日ほどかかります。

知事免許の変更よりも時間がかかることを考慮して、余裕を持って手続きをしましょう。

事務所の数を減らした場合

事務所が最初から1つの都道府県内でおさまっていれば、その中で事務所の数を減らしても、免許の区分は変わりません。

しかし、東京に本店があり、千葉県にも事務所があった場合で、千葉県の事務所を廃止して東京のみになる場合は、大臣免許から知事免許への免許替えが必要です。

こちらも、新たに該当する都道府県の免許を取得する手続きをします。

他県に事務所を移す場合

東京都で営業していたものを千葉県に移転するという場合は、1つの都道府県でおさまるので、知事免許であることには変わりありません。

ただし、管轄が変わりますから、新たに千葉県知事から宅建業免許を交付してもらう必要があります。

免許の区分を変更する手続き

では、免許替えをする際の手続きについて解説します。免許替えといいつつ、新たに免許を取り直すのと変わらないので、手続きには時間がかかります。

新事務所の場所を確定させる

新しい事務所の住所を確定させます。申請の時に、事務所が使える状態になっている必要がありますので、場所を決めるだけでなく賃貸契約もすませ、すぐに開業できるように準備をしてください。

新しい宅地建物取引士を選定する

宅建業を営む事務所には、従業員5人あたり1人の宅地建物取引士を置かなければならないと法令で決められています。これは事務所ごとにおく必要がありますので、事務所の数だけ宅建士が必要になります。誰をおくか、選定してください。

現在、本店の従業員が10人、宅建士が2人いるとします。新たに事務所を設立する場合、従業員5人あたり1人の宅建士を置かなくてはなりませんが、本店の従業員5人と宅建士1人を新事務所に移す、ということも可能です。

事務所の責任者(政令使用人)を選定する

各事務所に、宅建士とは別に政令使用人という事務所の代表者を置かなくてはなりません。支店長だと思って良いでしょう。「契約する権限を有する使用人」なので、名前だけでなく、実際にその事務所に常勤している人を選びます。

ですから、会社の代表者が複数の事務所の政令使用人を兼任することはできません。また、「常勤」していることが条件なので、たとえば東京事務所の責任者を大阪事務所の責任者にするということも難しいです。

ただし、宅建士が責任者を兼任することは可能です。宅建士が一人の事務所で、政令使用人も兼ねるという営業スタイルもできるということです。

申請手続きと納税

知事免許を申請する際は、各都道府県知事に申請することになりますので、都道府県庁に必要書類を提出します。東京に事務所を構えるなら、東京都知事に申請します。

大臣免許は、主たる事務所を管轄する地方整備局長宛に申請します。地方整備局とは国土交通省の地方支分部局です。

東京、千葉、神奈川に事務所を構えるとして、本店がある場所を管轄している地方整備局あてに書類を提出します。

ただし、知事免許、大臣免許ともに、書類を提出する窓口は、各都道府県の宅地建物取引業免許事務担当課となっています。

免許の区分を変更するといっても、手続きは新規取得の時と同じですので、申請書を提出するとともに登録免許税を支払います。

保証協会等の手続き

事務所を開く時に保証協会に営業保証金を納付していると思いますが、事務所が増えた時にもその時と同じ手続きが必要になります。ここでは、全国宅地建物取引業協会連合会(ハト)の手続きを説明します。

免許替えの申請をしたらすぐに、提出した書類の副本と協会所定の書類を用意します。本店・支店、それぞれを管轄している協会に申請書類を提出し、さらに、事務手数料、弁済業務保証金分担金を支払います。

弁済業務保証金分担金は支店ごとに30万円追加となりますので、追加する事務所の数分用意しておきましょう。

営業保証金を供託している場合は、支店1つごとに500万円の追加が必要です。

新しい免許証での営業開始

知事免許なら30〜40日程度、大臣免許なら100日程度で新しい免許が送られてきます。新免許が届いたら、いよいよ営業開始となります。

注意して欲しいのは、新しい免許が届くまで、追加した支店での営業はできないということです。たとえば東京に本店があり、神奈川県に事務所を増やす場合、東京本店での営業は問題ありませんが、神奈川の事務所では免許が届くまで営業を開始することはできません。

免許の区分を変更するときの注意事項

免許替えの手続きをする時に注意して欲しい点があります。最初に届け出た内容に変更があった場合、その変更をきちんと届出していないと免許替えの申請を受け付けてもらえないからです。

たとえば、以下のような変更点はありませんか?

  • 宅地建物取引士の変更(就任、退任)
  • 宅地建物取引士の氏名変更(結婚等による改姓)
  • 役員の変更(就任、退任)
  • 役員の指名変更(結婚等による改姓)

など。

これらの変更は、変更があった日から30日以内に届出することとされています。もし変更手続きが済んでいない場合は、免許替えの申請をする前に速やかに届け出ましょう。

まとめ:宅建業の知事免許・大臣免許は事務所のある都道府県の数で決まる

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宅建業を営むには免許が必要です。都道府県知事免許か、国土交通省大臣免許かは、事務所のある都道府県の数による違いです。1つの都道府県にしかない場合は知事免許、複数の都道府県にある場合は大臣免許となります。

たとえば東京都のみに事務所がある場合は知事免許、東京と神奈川、千葉に事務所がある場合は大臣免許です。

申請してから免許が交付されるまで、知事免許は30〜40日ほどですが、大臣免許は100日ほどかかります。

時間に余裕を持って開業のスケジュールを組みましょう。