敷金・礼金とは?ゼロなら良いわけじゃない、説明のポイント

 賃貸仲介業 2022.09.07

敷金・礼金という言葉は知っていても、実際にはどのような性質のお金なのか、よくわからないというお客様も多いのではないでしょうか?

最近では、「敷金・礼金ゼロ」という物件も増えてきています。払わないならその方がお得に感じますが、いわゆるゼロゼロ物件にはデメリットもあることを説明しなくてはなりません。

そこで今回は、敷金・礼金とはなぜ支払わなくてはならないのか、その理由と、払わない場合にはどうなるのか、お客様に説明する場合のコツを詳しく解説します。

敷金は戻ってくるお金である

敷金とは、退去時の修繕費などに充てるお金のことですので、担保のようなものだと説明できます。

敷金として10万円支払い、修繕費に3万円かかったとしたら、残りの7万円が戻ってきます。つまり、きれいに使っているほど、戻ってくる分も多くなるということです。

大きな破損はしていなくても、退去時にはハウスクリーニングなどが行われますので、100%戻ってくることはないとしても、まるまるなくなるお金ではありません。後でかかるお金を先にまとめて預けておくもの、と説明するとわかりやすいと思います。

礼金とは「謝礼」のようなもの

礼金とは、読んで字の如く、お礼のお金という性質があります。これからお世話になりますという意味を込めてお渡しする謝礼のようなお金ですので、戻ってくることはありません。

昔は今のように管理会社が物件を管理するのではなく、アパートの大家さんが自ら管理していることが多かったので、礼金はこれからお世話になることに対する感謝の気持ちという位置付けでした。

また、子供が上京して一人暮らしを始めるときに、大家さんに対して親が渡す心付けという意味もあったようです。昔は大家さんと借主の距離は今よりも近く、本当にお世話になっていた人も多いと思いますが、今は顔を合わせることもないのが普通でしょう。

それでも、謝礼をお支払いするという習慣だけが残っているのが礼金というシステムです。残念ながら戻ってはこないお金なので、無駄だと感じるお客様もいらっしゃるかもしれません。

しかし、後で説明しますが、礼金がないことのデメリットもありますので、その点を説明すれば理解を得られるはずです。

地域によっては違う名称が使われていることもある

関東圏では敷金・礼金と呼びますが、関西圏にいくと「保証金」や「敷引き」という呼び名になることもあります。引っ越しをする方は注意が必要です。

また、関東圏では敷金・礼金の相場は家賃の1〜2ヶ月分ですが、関西圏にいくと4ヶ月分以上となることが多く、お客様によっては驚かれることもあるでしょう。

退去時に返ってくるお金なのか、それとも礼金のように返ってこないものなのか、特に、関東から関西への引越しの際は、名称の違いなど丁寧に説明することが大切です。

敷金・礼金がない「ゼロゼロ物件」を紹介する

敷金は仕方がないとしても、礼金まで払う必要があるのか?と感じるお客様もいると思います。確かに、今は家賃の他に管理費も払うのが一般的ですし、顔も合わせない大家さんに礼金を払う意味は?と思うのは当然のことかもしれません。

どちらもゼロの物件はないのか?と聞かれることもあると思います。それならゼロゼロ物件を紹介するというのもありです。

ゼロゼロ物件なら引っ越しの初期費用が抑えられる

敷金・礼金は家賃の1〜2ヶ月分が相場ですから、それがゼロになるということは初期費用がかなり抑えられることになります。

家を借りるときには、初期費用として火災保険や不動産会社への仲介手数料もかかりますので、初期費用を少しでも抑えたいというお客様には、ゼロゼロ物件がおすすめです。

ゼロゼロ物件の数はそれほど多くない

とはいえ、ゼロゼロ物件はそんなに多くは出回っていないのが現状です。物件全体の1割程度だといわれていますので、実際紹介しようとすると、あまり多くは紹介できないでしょう。

ただし、両方ゼロではなく、たとえば礼金だけゼロという物件ならもう少し数が増えます。物件情報サイトで「礼金なし」で検索してみますと、2,668,581件中、841,812件が礼金ゼロでした。

およそ3割が礼金なしということです。礼金だけゼロの物件なら見つかりやすいかもしれません。

敷金・礼金がなければいいというものではない

初期費用を抑えたいと思っている人にとっては、敷金・礼金どちらもゼロの方がありがたいかもしれません。しかし、実はゼロなら必ずしも費用が抑えられるとは限らず、デメリットもあるということを理解してもらうことが大切です。

人気がない物件の可能性

ゼロゼロ物件の数はまだまだ少ないです。主流とは言い難いのにもかかわらずゼロにしているということは、そうでもしないと空き室が埋まらないから、という理由が考えられます。つまり、人気がないので、敷金・礼金をゼロにしてでも部屋を埋めたがっているということです。

住めれば多少の不便は構わない、初期費用を抑えられるなら贅沢は言わないという人であれば良いと思いますが、なぜ敷金・礼金がゼロなのか、その理由を探ることが大切です。

退去時にまとまったお金が必要になることもある

礼金は返ってこないお金なので節約したいという気持ちはわかります。しかし敷金は違います。あとでかかるお金を先払いしているという担保の意味もあるので、決して無駄にはならないお金です。

退去時のクリーニング代や修繕費が敷金から引かれますが、最初に払っていないということは後でまとまったお金が必要になるということです。初期費用が抑えられたとしても、退去するときにお金がかかるなら、同じことではないでしょうか?

また、最初に預けた敷金分、クリーニング等にまるまるかかるということはそうそうありません。後で一部戻ってくるのです。

次の新居での暮らしにその分を充てられるのですから、敷金を払っておくのは決して無駄ではないということを理解してもらいましょう。

選択肢が少なくなってしまう

先ほども説明した通り、ゼロゼロ物件の数はそれほど多くはありません。あまりゼロにこだわってしまうと、理想の物件がなかなか見つかりません。

お客様の希望を叶えつつ、敷金・礼金もゼロとなると選択肢が非常に狭くなりますので、その点を説明し、条件を優先させるか、ゼロゼロ物件であることを優先させるか、よく考えていただく必要があります。

家賃が高めに設定されていることもある

敷金・礼金をゼロにするということは、家主側からしますと収益がそれだけ減ってしまうということです。特別な理由でもない限り、あえて収益を減らそうという家主はいません。

それを補うには他で収益を上げなくてはならないので、敷金・礼金をなくす代わりに、家賃が高めに設定されている場合があります。物件を選ぶときには、その物件の広さでその家賃が妥当なのか、周辺の物件とよく比較する必要があるでしょう。

たとえば、家賃が相場より5,000円高かった場合、2年も住めば敷金・礼金を払った場合よりもトータルで支払う金額は多くなります。住む年数が増えるほど、その差は大きくなります。

初期費用を抑えることも大事ですが、トータルでどのくらいのお金がかかるのかという点も考えて、物件を選ぶことが大切です。家賃が高くつくなら、最初に敷金・礼金を払った方が結局お得になりますよ、と説明すれば納得していただけるかもしれません。

敷金・礼金トラブルを防ぐために知っておくべきこと

敷金が思ったよりも戻ってこなかった、礼金も戻ってくると思っていたなど、敷金・礼金についての理解が不十分なことから、退去時にトラブルになることがあります。トラブルを防ぐためには、以下のような点に注意してください。

何のためのお金なのかを理解してもらう

敷金や礼金がいくらなのか?と金額ばかり気にしないことが大切です。金額も大事ですが、なぜそのお金を支払わなくてはならないのか、その理由を理解してもらう方が重要です。

たとえば先ほども説明した通り、「ゼロゼロ物件」ならメリットばかりかというとそうではありません。実は家賃が高めに設定されているということもあるので、それなら礼金を払って、支払う総額を抑えた方が良いこともあるのです。

また、退去時の原状回復費用は必ずかかってくるものなので、敷金として先に支払っておけばあとで差額が戻ってきます。払って損をする性質のお金ではないので、あまり金額にこだわらない方が徳をすることもある、と理解してもらいましょう。

退去時のクリーニング費用の負担について理解してもらう

敷金のトラブルで多いのが、「思ったよりも戻ってこなかった」というものです。退去時には部屋のクリーニング代や修繕費が敷金から引かれることになりますが、どこまでが借主の負担になるのかを理解していなかったために、「たくさん引かれた」と不満が残ってしまうのです。

そのトラブルを防ぐには、

  • ルームクリーニング費用が含まれているか
  • 修繕についてはどの程度まで借主負担なのか

など、入居するときの重要事項説明書や賃貸契約書を隅々まで確認しておくことが非常に重要です。

難しくてよくわからないとあまりきちんと聞いていないお客様も多いので、あとでトラブルにならないように、大事な点をきちんと理解してもらうことがとても大切です。

敷金から引かれるものを理解してもらう

人が暮らしていれば、自然と劣化していく部分が必ずあります。たとえば、部屋の中に日光がさしていると、床や壁が日焼けします。これは、どんなに借主が丁寧・きれいに部屋を使っていたとしても、防げるものではありません。このような場合の修理費用は貸主負担となります。

一方で、借主の責任によって起きた破損などは、当然借主の負担となります。

  • 床に物を落として穴を開けてしまった
  • たばこで畳を焦がした
  • 結露を放置して壁にカビが生えた

このような場合の修繕費は敷金から引かれることになります。借主が何を負担するとなっているのかよく理解しておかないと「戻ってくる分が少ない」となってしまいますので、契約書をよく読み、納得してから契約してもらうことが大切です。

初期費用を抑えたいなら家賃を抑えることをおすすめする

もし、できるだけ初期費用を抑えたいという理由で敷金・礼金をなくしたいというのであれば、家賃を抑えることをおすすめした方が得策です。敷金・礼金が各家賃2ヶ月分だとして、家賃が5万円と6万円なら合計で4万円もの差になります。

家賃が安ければ、トータルで支払う費用も少なくなりますし、初期費用も抑えられて一石二鳥です。求める条件を絞り、これだけは譲れない!という点と、ここはなくても良いという点を分けて考えていくと、安い家賃でも理想の物件を提案できるでしょう。

まとめ:敷金は一部戻ってくる、礼金は戻ってこないお金

敷金とは、退去時の修繕費やクリーニング代に充てる費用で、最初に一定額を預けておいて必要な費用を引いたものが戻ってきます。礼金は謝礼の意味合いで渡すものなので、戻ってきません。いずれも家賃の1〜2ヶ月分が相場です。その違いをわかりやすく説明してください。

どちらも支払わない「ゼロゼロ物件」もありますが、件数はそれほど多くはありません。敷金がないことで退去時にまとまったお金が必要となる、礼金がゼロな代わりに家賃が高めな物件があるなど、必ずしも良いことばかりではないので、あまりゼロにこだわらない方が良いことも理解してもらうようにします。

それよりも、お客様がどんな家に住みたいのか条件を明確にして、理想の物件を見つける方が大事です。家賃を抑えることで敷金・礼金の額も抑えられますので、安くてもお客様が住みやすいと思える物件をぜひ提案してください。