成人年齢引き下げで賃貸契約はどう変わる?契約時の注意点

2022年4月から成人年齢が18歳に引き下げられたことにより、これまでは20歳を超えないとできなかったことが18歳でもできるようになりました。賃貸物件の契約もその中に含まれます。親の同意がなくても契約ができるということです。

では18歳ならどんな物件でも契約ができるのかというと、決してそうではありません。たしかに、法律上は成人となりましたし、契約行為もできるのですが、それと入居審査に通るかは別の問題です。

今回は、成人年齢が引き下げられたことと賃貸契約との関係や、賃貸物件を契約するときの注意事項についてまとめました。18歳は年齢的には大人ですが、社会的に信用のある人を頼って欲しい年齢だということを覚えておきましょう。

成人年齢に達していれば法律上誰でも賃貸契約ができる

契約とは、当事者同士の合意によって法的な義務と権利関係が生じるものであり、民法で定められています。賃貸契約もそのひとつです。

契約行為は成人に達していないとできず、未成年が契約をするには保護者(親権者)の同意が必要です。これまでは成人年齢が20歳でしたので、満20歳を越えていなければ賃貸契約は結べませんでした。

法律改正により2022年4月から成人年齢が引き下げられたことにより、18歳でもひとりで賃貸契約を結べるようになりました。

保護者の同意は必要ありません。賃貸契約に限らず、スマホを購入したり、クレジットカードを作ったりすることもできるようになったのです。

しかし、これはあくまでも「法律上」の話であり、18歳になっていれば全ての契約行為が必ずできるという意味ではありません。

18歳でも収入がなければ賃貸契約は難しい

鍵を手渡ししている

18歳になれば、賃貸契約を一人で結ぶことは法律上、可能です。しかし、賃貸契約には必ず入居審査があります。その審査に通るかどうかはまた別の話です。審査に通らなければ賃貸契約を結ぶことはできず、18歳になったばかりの人が審査に通るのはむずかしいでしょう。

一人で家賃を払えるか

家を借りるということは、毎月家賃が発生します。全て親が負担してくれるからいいという人は別ですが、そうでない場合は自分で払うことになるわけです。

家賃の相場は地域によって違いますが、一人暮らし用のアパートの家賃は、都心部では6万円ほどです。家賃は手取りの3割以下が理想とされていますので、少なくとも18万円程度の手取りがないと生活が厳しくなります。

18歳、高卒の初任給はおよそ16万円なので、手取りは13〜14万円ほどになると考えられます。そうなると家賃は4万円台に抑える必要がありますので、都心部で部屋を見つけるのはかなり難しいでしょう。

給料が低くても、貯金がある、補助してくれる親がいるなどプラスの材料がないと、一人の稼ぎで部屋を借りるのは大変です。

入居審査に通らない可能性がある

賃貸契約を結ぶには、支払い能力があるか、他の入居者とトラブルを起こさないかなど審査される点がいくつもあり、勤め先や年収なども申告しなくてはなりません。最低でも数ヶ月、長ければ数年にわたって家賃を払い続けることができるのか、支払い能力があるかどうかが重視されます。

貸す側としては家賃を滞納されることは避けたいですし、無用なトラブルも起こしたくないわけです。ですからこれまでも、職種や年収によっては20歳以上であっても審査に通らない人がいました。

18歳で定職についている人は少ないと思いますので、審査に通ることはかなり難しいといえます。つまり、18歳になったからといって簡単に賃貸契約が結べるかというとそうではないということです。ほとんどの場合、親の同意が必要とされるでしょう。

成人年齢引き下げ後の賃貸契約で注意すべきこと

仮に18歳の人が部屋を借りたいと来店した場合、話を聞く方としてはどうすれば良いか、以下の点に注意してください。

契約後の取り消しができなくなる

未成年者が勝手に契約行為をしてしまった場合、親権者が取り消すことができます。これまでは18歳が勝手に部屋を借りたとしても親の権限でなかったことにできました。

しかし、今後は18歳から成人ですから、親の同意がなくても契約できるのです。つまり、後から親が取り消しできなくなるということです。

未成年の契約行為を取り消せるのは、まだ社会的に未熟であるという理由です。判断能力にも乏しいので、誤った契約によって不利益が生じることのないように、親の取消権が認められています。

しかし、成人にはこのような法律の保護はなくなりますから、契約行為における責任が重くなるということを自覚しなくてはなりません。契約というのは一度結ぶと簡単に破棄できないものであるということ、よく理解してもらう必要があるでしょう。

同意書をとっておく方が良い

法律上は18歳になれば親の同意は不要です。しかし、部屋を貸す側としてはまだ不安な点は多いと思います。

親に内緒で部屋を借り、それが親にバレてトラブルになったというケースも見受けられます。一度契約してしまえば簡単には取り消しできませんし、トラブルを防ぐ意味でも、親の同意書を取っておくと安心です。

賃貸契約に必要なことを理解してから契約をすることが大事

賃貸契約書とペン

18歳になったばかりですと、契約をするということの意味をあまり理解していないかもしれません。

賃貸契約は、部屋を借りる・貸すという契約ですが、それには決められた日に賃料を支払う以外にもさまざまなことが規定されています。

  • 契約の更新時に更新料を支払うこと
  • 賃貸契約の解約について
  • 原状回復義務について

などが契約書には書かれていますが、それぞれどういう意味なのか、借りる側はどのような義務を負うのか、正確に理解をしてから契約しなくてはなりません。

大人でも重要事項説明書や契約書を隅々まで見ておらず、原状回復などで揉めることがあります。18歳で契約に慣れている人はあまりいないと思いますので、なおさら時間をかけて理解する必要があるでしょう。

重要事項説明書は事前に送って目を通してもらい、わからないことがあれば小さなことでも良いから確認してもらうことが大切です。

親など社会的信用のある人が契約するのが無難

18歳で進学や就職のために一人暮らしを始めるという人も多いかと思いますが、その際は本人名義で契約するよりも、親や親族など社会的に信用のある人の名で契約することをおすすめします。

本来は、契約者本人が入居する前提で賃貸契約を結びますが、入居者が18歳・19歳であり、まだ若いことを理由に保護者が契約することにすれば、入居者と契約者が違うことについてはとくに問題ありません。

むしろ、親や親族など支払い能力のある人の名で契約した方が、入居審査も有利になります。

なお、のちのち、社会人になってから自分名義で契約したいとなれば、そのときに再度契約が必要となります。

その際はあらためて初期費用が必要となりますので、その点だけ覚えておきましょう。

まとめ:成人年齢引き下げでも18歳で賃貸契約は難しい

法律改正によって成人年齢が引き下げとなりましたので、法律上は18歳から契約行為ができます。賃貸契約も、親の同意なしに結ぶことができるようになりました。

とはいえ、実際に単独で賃貸契約ができるかというと、それは難しい問題です。

賃貸契約は、少なくとも数ヶ月、長ければ数年にわたって家賃を払い続ける契約ですから、支払い能力が重視されます。

18歳で定職についていて十分な年収がある人は少なく、入居審査に通らない可能性の方が高いです。

貸す側にも安心してもらい、入居審査をスムーズに通過するには、18歳で成人していても親の同意書をとっておくと安心です。