不動産仲介の開業資金はいくらかかる?独立に必要な資金の内訳
不動産仲介業で独立しようと考えている方は、開業資金がいくら必要なのか気になるところだと思います。不動産仲介業は他の業種と比べると少ない費用で独立できるともいわれていますので、計画的に資金を貯めていけば、一人でも開業は可能です。
ただし開業するには、事務所を立ち上げるまでの資金だけでなく、売り上げが安定するまでの運転資金や生活資金も必要です。先を見越した資金計画を立てておかないと、あっという間に資金不足で事業が行き詰まる可能性もあるからです。
では具体的にどのような費用がかかるのか、独立するために必要な資金について詳しく解説します。これから開業を考えている方はぜひ参考にしてください。
目次
不動産仲介業を始めるには事務所が必要
不動産仲介業は、ひとりでも始められます。ただし、事務所の開設が必要です。不動産業を営むには「宅地建物取引業免許」が必要となりますが、その免許を取得するためには事務所を持っていることが要件となっているためです。
審査に通過しないと免許が取れませんから、どのような事務所が必要なのか、事前にしっかりと確認しておきましょう。
特に、自宅で事務所を構えたいと思っている人は注意が必要です。事務所はどこでも良いわけではなく、不動産会社として適切な仕事が行えるように、さまざまな要件が定められています。
- 事務所専用の独立した入り口があること
- 部屋が独立していること
たとえば、最初から賃貸オフィスにかけるお金がなく、コストを抑えるために自宅に事務所を構えようとする人は多いのですが、自宅の一室では独立した入り口がありません。その時点で、要件を満たしていないことになります。
もし、二世帯住宅のような構造で入口を別にしたとしても、事務室が他の居室から完全に独立していることが条件ですから、リビングの一角などを事務所にすることはできません。
また、
- デスク
- コピー機
- 固定電話
- 応接場所
など、事務所として機能するための設備が必要です。自宅の一部とみなされてしまうような形態では審査に通りません。シェアオフィスも同様です。独立性が保てない事務所ですと許可が下りず免許を取得できないので気をつけましょう。
独立した入口を確保できるよう、自宅とは別に部屋を借りるか、入り口が別にできるシェアオフィスを利用します。
審査の問題もありますが、お客様が来店するときのことも考えて事務所選びをしなくてはなりません。特に、売買仲介で開業するなら店構えは重要です。
もし自分が5,000万円の家を買おうというとき、きちんとしたオフィスを構えている会社と、自宅の一室が仕事場になっている会社ではどちらの方が信用されるでしょうか?
開業にあたっては、事務所にかかる費用を少しでも節約したいという気持ちがあるかもしれませんが、事業を早く軌道に乗せるという観点で考えることも大切です。
不動産仲介の開業資金は500万円
それでは、開業にどのくらいの費用がかかるのか、総額でおよそ500万円ほどみておくとよいですが、その内訳について説明します。
- 法人を設立するための費用:242,000円
- 宅建業免許の申請手数料:33,000円(知事免許の場合)
- 営業保証金:600,000円(支店があれば+300,000円)
- 保証協会の入会金・分担金:800,000円〜
- その他(事務所開設費用など):200万円〜300万円
法人設立費用
個人事業主として不動産仲介の仕事を始めることは可能です。それであればこの費用はかかりません。しかし、会社を起こして事業を始める方が多いです。自分が不動産を探す立場になってみればわかりますが、家を借りる、もしくは家を買う場合、決して安くはないお金がかかります。
信用できる会社を利用したいと思うのは自然なことで、個人事業主とやりとりするのは不安に感じる人の方が多いのではないでしょうか。
信頼して仕事を任せてもらうためにも、法人化している方が良いでしょう。法人を設立するためには、以下の費用がかかります。
- 定款認証手数料:50,000円
- 定款の収入印紙代:40,000円
- 定款の謄本手数料:2,000円
- 登録免許税:下限150,000円(資本金額0.7%)
この合計が242,000円なので、設立する手続きだけでこの金額がかかるということです。株式会社は資本金が1円から設立できますが、この資本金が大きくなるほど登録免許税も大きくなります。
また、上記は紙の手続きに必要な費用で、電子定款を利用すれば収入印紙代を節約できます。費用を抑えたい人は資本金を小さくし、電子定款を利用すると良いでしょう。
宅建業免許の申請手数料
株式会社を設立しても、すぐに不動産仲介業をスタートさせられるわけではありません。不動産の仕事を始めるには、各都道府県知事に宅建業の免許を申請し、免許が交付されて初めて業務を開始できるのです。
事務所が1つしかない場合は都道府県知事免許、複数の都道府県にまたがる場合には国土交通大臣免許が必要です。
始めは事務所1つからスタートすると思いますので、その際は都道府県知事免許となります。申請にかかる費用は33,000円です。ちなみに大臣免許ですと費用は90,000円です。
営業保証金
開業する際には営業保証金が必要で、1,000万円必要です。支店を増やせば、支店ごとに500万円必要になります。不動産仲介では扱う金額が大きいため、会社の経営が悪化した時に顧客に迷惑をかけてしまうこととが想定されます。そのような事態を避けるため、保証金を預けておくのです。
しかし、個人でこれだけの金額を用意するのは難しいことから、一般的には宅建協会に加入します。営業保証金を弁済業務保証金分担金として、本店60万円、支店があれば1つにつき30万円負担することで、保証金の1,000万円が全額免除となるのです。
宅建協会等に入会する費用
営業保証金を節約するために宅建協会等に入会するには、入会金などの費用が必要です。
- 入会金
- 年会費
- 弁済業務保証金分担金
などを合計して、100万円〜が必要です。宅建協会は都道府県ごとにあり、協会によって諸費用が違いますので、入会したい協会の費用を確認しましょう。
各協会で随時、入会キャンペーンなどをやっていますので、よく調べてから入会時期を決めると、少しでも費用の節約になります。
100万円以上かかるとなると高額に感じるかもしれませんが、この入会金を支払えば1,000万円の保証金が免除されるのですから、入らないという選択肢はないでしょう。
事務所を開設するためにかかる諸費用
事務所開設で最も費用がかかるのは、敷金・礼金を含む初期費用です。住宅としてアパートなどを借りる場合は、敷金も礼金は家賃の1〜2ヶ月分が多いですが、事業用の物件となるともっとお金がかかります。
- 敷金(保証金):家賃の6ヶ月分
- 礼金:家賃の1〜2ヶ月分
- 家賃の前払い分:1〜4ヶ月分
- 保証会社への委託料
- 仲介手数料:家賃の1ヶ月分
- 火災保険料
などがかかります。
たとえば家賃が15万円なら敷金だけで90万円、諸々合わせて150万円ほど見積もっておきたいところです。家賃が高ければ当然これ以上かかります。
このほかに事務機器やインターネットなどの通信費も含め、200万円〜300万円ほどかかるでしょう。内装工事などを行えば、さらに費用がかかります。
営業を始めてからかかる費用
仕事を開始してからも、収入が安定するまではマイナスの方が大きいです。しばらくは収入がなくても事業を継続していけるように、維持費もしっかり蓄えておきます。
事務所の維持費
維持費としてかかるのは、
- 家賃
- インターネットなどの通信費
- 光熱費
などです。
運転資金として、3ヶ月は収入ゼロでも事務所が維持できるだけのお金を用意しておきます。
広告宣伝費
- 自社のホームページの制作費
- ポータルサイトへの掲載費
- SNS等への広告掲載費
などの宣伝費用がかかります。もちろん、多額の費用をかければよいというものではありませんので、ターゲットに合わせてどの媒体にどのくらいの費用をかけるべきなのか、よく考えなくてはなりません。
1ヶ月いくらと上限を決めて試行錯誤しながら、適切な広告費を探っていくことが大切です。
生活費
数ヶ月は収入がないことも想定して、その間の生活費も確保しておく必要があります。独身か家族がいるかによって必要な費用は違ってくると思いますが、病気やケガなど不足の事態にも備えられるようにしておきましょう。
賃貸仲介と売買仲介、どちらで始めるべきか
不動産仲介業と一口にいっても、賃貸、売買があり、それぞれ仕事の流れが違ってきます。どちらか一方にするか、それともどちらも手がけるのか、最初に決めておきます。仲介手数料は当然ながら売買仲介の方が高いです。
- 賃貸仲介:家賃の1ヶ月分(上限)
- 売買仲介:物件価格の3%+6万円+消費税(上限)
家を1軒売るのは大変ですので、賃貸仲介から始めるべきという意見もありますが、仲介手数料を考えると売買仲介の方が圧倒的に大きいのです。
1軒でも売れれば資金に余裕もできますから、売買仲介から始める、もしくは両方同時に手がけるというパターンが多いです。
どれが正解ということではないので、まずはこれまでの経験を活かせる分野で開業するのが良いのではないでしょうか。
まとめ:不動産仲介業の開業資金は500万円+維持費・生活費
不動産仲介業で独立するには、開業資金としておよそ500万円用意しましょう。法人設立費用や免許取得にかかる費用、そして事務所を開設する費用です。
賃貸仲介でも売買仲介でも事務所の開設は必要ですので、最低でもこのくらいの金額が必要です。事務所の賃料が高い場合にはこれ以上かかることもあります。
また、開業してしばらくは収入がないことも想定して、事務所の維持費や生活費を数ヶ月分は確保しておきたいところです。
独身か家族がいるかによっても違ってきますが、資金不足で事業が立ち行かなくなるということのないように、資金は余裕を持って準備しておきましょう。