IT重説対応物件とは?できる条件や流れ、メリット・デメリット

IT重説とは、スマホやパソコンなどのIT機器を使って行う重要事項説明のことで、IT重説ができる物件のことをIT重説対応物件と呼んでいます。

実施するにはIT環境を整えなくてはならないですし、IT重説ができる条件も知っておかなくてはなりません。つまり、どのような物件でもIT重説ができるわけではないのです。

そこで今回は、IT重説対応物件について詳しく解説するとともに、IT重説を取り入れることのメリットやデメリットについてお話しします。

IT重説とはIT機器を使って重要事項説明書を示すこと

不動産を契約するときには、重要事項説明が不可欠です。建物の所在地や構造、設備の状況など不動産会社が説明するべき事項のことで、これを記載したものが重要事項説明書です。

契約を結ぶ前に、宅地建物取引士の免許を持っているものが説明しなければならないとされています。

法律改正により対面以外でも重説が可能になった

重要事項説明書を説明するとき、これまでは対面での説明が必須でした。2017年に法律が改正され、賃貸契約においてはパソコンやスマホを使って説明するIT重説が可能となりました。

内容を説明し、質疑応答が行えるなど双方の対話が可能な環境を整えれば、自宅でも出先でも、不動産会社に出向くことなくどこにいても重説が可能となったのです。

売買契約でもIT重説が可能に

当初は賃貸契約のみだったIT重説も、2021年4月から売買契約においても実施できるようになりました。十分な検証ができておらず実施が遅れていましたが、コロナ禍の影響もあり、整備が急いで進められ実施に至りました。

ですので、現在では賃貸でも売買でもIT重説が可能です。

IT重説が可能となる条件

では、IT重説は誰が実施できるのでしょうか。対面の重説と同様に、宅地建物取引士の免許を持っている人しかできません。重説は宅建士の独占業務ですから、ITを利用したとしても原則は同じです。

IT重説を行う場合には、説明の前に宅建士の免許証を提示します。

IT重説対応物件とは

IT重説対応物件とは、読んで字のごとく、IT重説ができる物件のことを指します。IT環境が整っていたとしても、すべての物件がIT重説可能というわけではないのです。

IT重説を行うには、

  • 不動産会社側でIT重説ができる環境が整っていること
  • 売主・貸主からIT重説の同意が得られていること

この2つの条件が必要です。

特別な免許、登録等は必要ないのですが、この条件が整った物件でないとIT重説ができません。

IT重説を行わない方が良い物件

不動産会社等へ出向かなくても重説を受けられるのですから、IT重説の方が断然便利に思えるのですが、中にはIT重説をしない方が良い物件もあります。

それは、まだ内見が済んでいない物件です。IT重説は、遠方にいるお客様に、現地まで足を運んでいただかなくても重説ができるのが大きなメリットなのですが、内見をしないまま契約をしてしまうと、あとからトラブルが起こる可能性があります。

たとえば築年数が古い物件などは、実際に入居してみたら「思ってたのと違う」となりかねません。契約までに一度でも内見ができれば良いのですが、IT重説を行った後に「やはりやめる」となったら振り出しに戻ってしまいます。

IT重説は、内見しなくても問題なさそうな物件に絞って行う方が安全です。

IT重説を導入する6つのメリット

IT重説を取り入れるのはそれほど難しくはありません。初期投資もそれほどかかりませんので、導入するメリットは大きいです。

1.端末と通信回線さえあればOK

IT重説に特別な機器は必要ありません。パソコンだけでなくスマホも使えますから、あとは通信環境さえ整えればOKです。

自宅にWi-Fi環境がないというお客様がいたとしても、スマホが繋がる環境があればIT重説は可能です。

2.場所を選ばず重説ができる

お客様がスマホさえ持っていればIT重説ができますから、場所はどこでも良いですし、不動産会社へ出向く必要もないので往復の時間も節約できます。

3.日程調整がしやすい

往復の時間を含めなくて良いので、忙しくて不動産会社まで出向くことができないという人でもスケジュール調整が容易になるでしょう。

4.対面する時間・労力を節約できる

不動産会社まで出向くとなれば、使うのは時間だけではありません。交通費もかかりますし、もし遠方から来るとなると、場合によっては宿泊費もかかるかもしれません。

重説のために時間や労力をかけることに負担を感じるお客様もいるでしょう。 IT重説ができれば、時間もお金も節約できます。 特に春の繁忙期は就職や進学による引っ越しも多い時期です。

何かと忙しい時期に、重説にかける負担を減らすことができれば、契約に至る率を高めることにもつながるでしょう。

5.必要があれば録画ができる

相手の同意があってのことですが、IT重説なら録画ができますので映像・音声を記録として残すことができます。

あとで言った、言わないのトラブルになることを防げるでしょう。 録画については、国土交通省から出ている「賃貸取引に係るITを活用した重要事項説明実施マニュアル」があります。

  • 利用目的を明らかにして、双方了解のもとに行う
  • 録画することが不適切であると判断される情報については適宜録画を中止する
  • 相手方の求めがあればコピーを提供する

などの対応方法が定められています。

6.コロナに感染していても実施できる

コロナウイルスの感染については、まだまだ安心できない状況です。ただの風邪扱いはできないため、感染してしまえば外出ができません。

そのような状況にあっても、IT重説が実施できれば手続きがスムーズに進みます。

IT重説の5つのデメリット

不動産会社とお客様、双方にメリットが大きいIT重説ですが、デメリットもないわけではありません。

1.通信環境が悪いと説明しづらい

スマホがあっても通信環境が悪いと、説明の途中で回線が途切れてしまうなど通信トラブルが起こる可能性があります。

最悪の場合、日を改めて、ということになってしまい、なんのためにIT重説にしたのかわからなくなってしまいます。

かろうじて繋がっていても音声が聞き取りづらいなどの不具合も起こりやすいので、接続テストなど事前準備が欠かせません。

2.アプリのインストールなどの手間がかかることがある

IT重説を実施するにあたり、オンライン会議ツール(アプリ)をお客様が入れていれば良いのですが、入れていない方にはインストール方法や使い方から説明しなくてはならない場合があります。

また、Zoomやスカイプなど認知度の高いアプリではなく、不動産会社独自で入れているアプリを利用するとなると、普段使っていない・使わないアプリを入れるのは…と契約に後ろ向きになってしまう可能性も捨てきれません。

IT重説の前に、使用しているアプリについて説明し、必要に応じてインストールのサポートをするなどしてお客様の負担を減らす工夫をしてください。

3.関係者の同意を得る必要がある

IT重説は、環境だけが整ってもできるものではなく、売主(貸主)の同意が必要です。同意書については特に法令で定められてはいませんが、後々トラブルにならないためにも、文書で残して双方で持っておいた方が良いでしょう。

4.相手の理解度がわかりづらい

画面を通してのコミュニケーションは、相手の温度感が伝わりにくく、こちらの説明を本当に理解してくれているのか、計りかねる場合があります。

対面ではないことで、相手も質問しづらくなってしまう場合もありますので、適宜こちらから話しかけるなどして、話がわからないまま進んでいないか確認をしてください。

5.内容を軽視されてしまう恐れがある

IT重説は、自宅にいながら話を聞くことができるため、リラックスしてつい大事なところを聞き流してしまうリスクもあります。

非常に重要な話を聞いているはずなのですが、自分がリラックスできる環境で話を聞いているとその重要性が薄れてしまう可能性があるので注意が必要です。

あとで「そんな話は聞いてない」とならないよう、録画等の対策を取っておいた方が安心です。

これから導入したい人へ、IT重説の流れを解説

IT重説の大まかな流れを説明します。

IT環境の整備と確認

  • 双方の映像を確認できること
  • 音声が十分聞き取れること

など、IT環境が整っていることを確認します。

スマホかパソコンか、デバイスを確認するとともに、利用するアプリについても問題なく作動するか、事前テストをしておきます。

重要事項説明書を送付しておく

対面せずに説明できると言っても、重要事項説明書が手元にある状態で説明を行う必要があります。IT重説を実施するより前に、現物を送付しておきましょう。

重要事項説明書は宅建士が記名・押印しなくてはならないので、PDFなどの電子データで送ることはできません。

説明する前に宅地建物取引士証を提示する

IT重説でも、対面での重説と同様に、宅建士であることの証明が必要です。

話をする前に、宅地建物取引士証を提示しましょう。 取引士証をカメラで見せて、本人の写真であることを確認してもらいます。

相手の身元を確認する

身元確認は、契約者の側も必要です。お客様本人であることを確認するため、運転免許証などの身分証明書を提示してもらいます。

同意を得た上で録音・録画する

後々のトラブルを防ぐため、お客様の同意を得て録画・録音しておくことをおすすめします。利用目的を説明し、不要な部分は適宜録画・録音を中止する旨を伝え、お客様が希望する場合にはコピーを提供します。

IT重説後に内見をする

IT重説のあと、そのまま契約をしても良いのですが、入居後のトラブルを防ぐために、できるだけ内見の機会を設けましょう。

まとめ:IT重説対応物件はスマホやパソコンで重説が可能

IT重説対応物件とは、パソコンやスマホなどIT機器を使った重説が実施できる物件のことです。

全ての物件がIT重説に対応しているわけではなく、環境が整っていない、貸主の同意が得られないなど対応できない物件もあります。

IT重説ができると、わざわざ店舗に足を運ばなくても良くなり場所も選ばず、時間も節約できます。一方で通信環境が悪くなると話が途切れることもあるので、そういった場合の対応を考えておくことも大切です。

IT重説の基本的なやり方は対面式と同じですが、IT重説なら録画・録音もできますから、後々のトラブルも防ぐことができるでしょう。