おとり物件とは?見極めるポイントと引っかからないようにする方法

 コラム 2022.05.30

良い物件はないかと探していて、「これだ!」と思って問い合わせ不動産会社に行ってみたら、「さっき決まってしまたんですよ…その代わり、こちらの物件はいかがでしょうか?」と別の物件を紹介された経験はありませんか?

本当にタッチの差で契約が決まってしまうケースはゼロではありませんが、これは「おとり物件」である可能性が高いです。

おとり物件とはその名の通り「おとり」として出されている物件で、実際に契約できることはありません。おとり物件が迷惑な理由、そして引っかからないようにするためにおとり物件を見極めるポイントなどについて詳しく解説します。

おとり物件とは?違法性のある物件

おとり物件とは、広告には出ているのに実際には取引ができない物件のことです。故意に広告を出している場合もあれば、たまたまホームページの更新が間に合わず、結果としておとり物件になってしまったケースもあるのですが、いずれにせよ、おとり物件は法令に違反しています。

「不動産の表示に関する公正競争規則及び施行規則第21条」には、物件が存在しないのに広告を出すことや、物件が存在していても取引ができないことがわかっていて広告を出すことは禁止されています。

また、宅建業法の第32条でも「誇大広告等の禁止」に関する規定があります。おとり物件は、事実と異なる広告として処分の対象となる可能性があります。

首都圏不動産公正取引協議会が2020年11〜12月に行った調査によると、賃貸広告のうちおよそ12%がおとり広告だったということです。

法令で禁止されているのになぜおとり物件がなくならないのか、それは故意にやっているのか本当にたまたまそうなってしまっただけなのか、実態が掴みづらいためです。法令があってもなくすことが難しく、いまだにおとり物件にひっかかってしまい、不利益を被る消費者が後を絶ちません。

おとり物件の種類は主に2つ

おとり物件には大きく分けて2つあります。意図したものではなかったとしても、適切な広告ができていなければおとり物件となってしまうことがあります。

うっかりミスによるおとり物件

情報の管理を適切にできていないと、意図せずおとり物件になってしまうことがあります。

  • すでに契約が成立した物件が削除されずに残っている
  • ポータルサイトの物件情報を削除したが、更新のタイミングとタイムラグがあって情報が残っていた
  • 契約が成立していることを把握していなかったために広告を出してしまった

というケースです。

通常は、契約が成立すれば担当者が広告を削除しますが、それが残ったままですと新たに問い合わせが入ってしまう場合があります。

お客様が物件を見にきても、すでに契約が済んでいる物件ですからご紹介することはできず、他の物件はいかがですか?とすすめることになり、結果としておとり物件のようになってしまうということです。

不注意によって生じる事態ですが、気に入った物件を見せてもらえずに他の物件を紹介されたお客様にとっては故意と変わりありません。

本物のおとり物件

集客目的で、あえて契約できない物件の広告を出すケースももちろんあります。問い合わせを増やすことが目的ですから、非常に好条件の物件が掲載されていることが多いです。

こちらは意図的に行っていますので非常に悪質ですし、法令違反で営業停止処分にも該当する行為です。

おとり物件にひっかかるとどうなる?

おとり物件に惑わされると、消費者にはどのような不利益があるのでしょうか? おとり物件は客寄せ物件ですから、消費者に来店させることが目的です。お店に来たところで、その物件はすでに契約が決まってしまったと言い、「実はもっといい物件があるんです」と他の物件を次々と紹介してきます。

おとり物件だったと知らない消費者は気に入った物件を見せてもらうつもりで来ているので、あれこれと紹介されると、自分が希望していた条件と多少ずれても契約してしまう危険があります。

また、おとり物件を掲載するような不動産会社は信用できませんが、そんな会社と契約したら、後々どんなトラブルがあるかわかりません。消費者のことを考えていない、利益第一のような会社とは契約しない方が賢明です。

おとり物件に惑わされない!見極めるための9つの方法

では、おとり物件に騙されないようにするにはどうすればいいのでしょうか?見極める方法を9つをご紹介します。

1.不動産会社に直接聞いてみる

気に入った物件があったら、内見できるかどうかを不動産会社に電話で聞いてみます。自社で管理している物件でない限り、現在の状況がどうかを確認しなくてはなりません。

管理会社等に確認してから内見、となることが一般的なので、「いいですよ」と即答する場合には、注意が必要です。

2.家賃が相場より低い

家賃には相場がありますので、周囲の物件と比べて安すぎる場合にはおとり物件の可能性があります。訳あり物件や築年数が著しく古い等の理由でない限りは、同じ広さなら同じくらいの家賃になるものです。

3.取引様態を確認する

宅建業法によって、大家さんとの関係性を占める「取引業態」を表示しなくてはいけないことになっています。取引業態とは、主にこのようなものを指します。

  • 貸主:大家さんのこと。貸主から直接借りるので仲介手数料がない
  • 代理:不動産会社から大家さんから代理権を与えられている
  • 仲介元付:大家さんから入居者募集について直接依頼を受けている
  • 仲介先物:仲介元付から広告掲載等の依頼をされている

この中で注意をしなくてはならないのが仲介先物です。大家さんと直接関わり合いがないので、不当な広告を掲載してもバレにくいという特徴があります。ですから、取引業態に「仲介先物」とあるときは要注意です。

4.物件の画像が掲載されているか

物件の画像が複数掲載されていない、同じ画像ばかりが使われているという物件は、おとり物件の可能性が高いです。「この物件の詳細を知りたい」と問い合わせをさせるためにあえて画像を少なくしているのです。

5.住所や物件の詳細情報がわからない

住所の詳細が掲載されていない場合は、おとり物件である可能性があります。物件そのものが存在しないため、詳細情報を載せられないと考えられます。

詳細を知りたいと問い合わせをしてしまうと良いカモになってしまいますので、詳細情報がない物件は諦めて他を当たりましょう。

6.物件情報が2週間以上前のものである

良い物件は、掲載してから2週間も経てば入居者が決まります。家賃が高すぎるなど条件が悪い場合は仕方ないとして、一般的な条件もしくはそれ以上の良い条件なのに決まらないのには理由があるはずです。

時間が経っても掲載されている物件は、何か物件に問題があって契約が決まらないか、おとり物件だと考えた方が良いでしょう。

7.一つの不動産会社しか取り扱っていない

不動産は、1つの物件を複数の不動産会社が取り扱うことが可能なので、A社とB社、C社が同じ物件の広告を掲載していることがあります。いろいろなポータルサイトを見ていると、同じ物件が何件もヒットするのはこのためです。

ですが、1つの不動産会社しかその物件をのせていないとすると、それはおとり物件の可能性があります。他の不動産が取り扱えない物件だからです。

気になる物件があったら、他の不動産会社も広告を出しているかどうかを探すだけでも、おとり物件を見極めることができるでしょう。

8.掲載されている条件が他社と違う

複数の会社が掲載していればよいかというと、必ずしもそうではないのが面倒なところです。家賃等の条件はほぼ同一になるはずなので、他社と条件を比較して著しく好条件の場合は注意が必要です。

実際にはその物件を紹介するつもりはないのに、おとり物件として広告を出している可能性があります。

9.現地集合を提案してみる

内見をするときには、不動産会社を訪れることなく現地で落ち合う場合もあります。ですから、直接現地で会いましょうと提案してみるのも、おとり物件を見極めるひとつの方法です。おとり物件でなければ、現地集合を断る理由は特にないはずだからです。

もしあれこれ理由をつけて会社の方に来るよう促すなら、集客目的のお取り物件だと考えて良いでしょう。

おとり物件を見つけたら通報しよう

もし「これはおとり物件ではないか」というものを見つけたら、その情報が掲載されていたポータルサイトや消費者庁に通報した方が良いでしょう。

消費者庁のウェブサイトには「景品表示法違反被疑情報提供フォーム」があります。法令違反に該当するか、消費者庁で調査をしてくれます。

まとめ:おとり物件は違法!ポイントを押さえしっかり見極める

おとり物件とは本来紹介するつもりがない、契約することができないことがわかっていてホームページに掲載している物件のことをいいます。取引できないことがわかっているのに広告にを出すことは、法令に違反する行為です。

しかし、契約後もうっかり掲載をそのままにしていたケースなど故意ではない場合もあり、法令違反でありながらもなかなか無くせないというのが現状です。

おとり物件かどうかを見極めるには、家賃が相場より低すぎないか、掲載情報が古くないかなど、いくつかのポイントを確認すればわかります。理想とは違う別の物件を契約させれたりしないようしっかり見極め、おとり物件だと思ったら消費者庁へ通報することをおすすめします。