知らないでは済まされない不動産広告のルール【賃貸編】
不動産広告には多くの情報が記載されていることから、誤った認識を持たれないように細かいルールが設定されています。
広告担当者がこのルールを理解しておかないと、思わぬルール違反となってしまい、処分を受ける可能性があります。
そこで今回は、不動産広告で押さえておくべきルールのポイントについて詳しく説明します。法律で決められていることは知らなかったでは済まされないので、今一度、自社の広告を見直してみてください。
目次
不動産広告のルールを守る重要性
- 不動産の広告に関しては、
- 宅地建物取引業法
- 不当景品類及び不当表示防止法
によって、ルールが決められています。
誇大広告等の禁止や不当な広告、過大な景品の提供を禁止していますので、このルールに則って広告を作成しなくてはなりません。
また、不動産業界でも「不動産の表示に関する公正競争規約」によって独自のルールを定めていますから、これらに違反すると大きなペナルティが待っています。
宅建業法に違反すれば業務停止処分や免許取り消しという重い処分もあり得ます。
問題は、知識が不足していたために、意図せず違法な広告を作ってしまう可能性があるということです。故意に違法な広告を作って処分を受けるのは当然ですが、それが違法であることを知らずにうっかり間違ったという場合でも、法に反していれば処分の対象となります。
「知らなかった」では済まされないのが法律です。
もし違法だと判断された場合、処分内容とともに社名なども公表されます。そうなると、悪徳業者だろうがうっかり間違いだろうが、処分されたという結果は同じですから、消費者からは良い印象が持たれなくなってしまうでしょう。
知識が不足していたがために処分を受け、それが今後の事業に影響したら、それはとてももったいないことです。ですから、何をしたらいけないのかを理解し、ルールに則った適切な広告を作ることが大切です。
規制の対象となる不動産広告の種類
どのような種類の広告にルールが適用されるのでしょうか。「不動産の表示に関する公正競争規約」では、以下を対象としています。
- WEB広告(ホームページ内、SNSなど)
- ポスターや看板(電車や駅のデジタル広告、ネオン、自動車を利用した広告などを含む)
- のぼり、垂れ幕、アドバルーン
- チラシ、パンフレット、小冊子、ダイレクトメール(電子記録媒体、ファックスを含む)
- 電話を含む口頭による広告
- 新聞、雑誌などの出版物
- 放送、映像、演劇
- モデルルームなど
ほぼ、全ての媒体が対象となっていますので、宣伝に関するものはどのような形であれ法を遵守しなければならないと思ってください。
不動産広告の基本ルール
不動産広告を作成する際に気をつけなければいけない基本的なルールをおさらいしましょう。うっかりこのような表現を使っていないか、自社の広告を見直してみてください。
宅建業法による3つの基本ルール
- 誇大広告の禁止
- 広告開始時期の制限
- 取引態様の明示義務
誇大広告とは、実際よりも良い物件のように表現する広告のことです。条文では誇大広告自体を禁止しているので、誇大広告を信じて物件を買って損害が出たなど実害がなくても、広告を出した時点で違法となることに注意が必要です。
よりよく見せるだけでなく、デメリットを表示しないことも誇大広告に含まれます。
広告開始時期については、建築確認がされてからと決まっています。建築確認が下りる前に広告をしてしまうと、万が一許可が下りなかった場合にお客様に不利益が生じるためです。
取引態様については、
- 売主
- 貸主
- 代理
- 媒介(仲介)
の種別を明記することになっています。
表示基準
お客様が誤解をしないように、理解しやすい表記の方法が統一されています。これを表示基準と呼んでいます。一例をご紹介しましょう。
区分 | 表示内容 |
---|---|
物件の所在地 | 都道府県、市町村から番地まで表記する |
交通の利便性 | 最寄駅やバス停など |
各施設までの距離と所要時間 | 徒歩による所要時間は、道路距離80メートルにつき1分間として計算した数値を表示すること |
面積 | メートル法にて表記し、1平方メートル未満は切り捨て |
物件の形質 | 居室として認められない部屋は納戸(N)、サービスルーム(S)などと表記する |
写真や絵図 | 写真や絵は取引する建物を表示する |
価格・賃料 | 賃料、共益費、管理費は1ヶ月あたり |
設備・施設 | 上下水道、井戸の別、ガスの種類など |
設備・生活関連施設 | 学校、病院、官公署、公園など |
特定用語の使用基準
他の物件と差別化したいがために、極端な表現を使ってしまいがちですが、どのような表現であってもそれを裏付ける根拠がなくてはなりません。根拠のない表現は違法となります。このような表現は禁止されているので気をつけましょう。
- 完璧、絶対、完璧
- 日本初、日本一、地域No.1、抜群
- 最高、特級、極
- 特選、厳選
- 激安、掘り出し物、格安
たとえば、「最高」という言葉ですが、何をもって最高とするのか、その基準が曖昧です。誰もが満足する完璧な家などあり得ないので、根拠を示すことができない表現は避けるようにしましょう。
不当表示の禁止
実際よりもよく見せようという工夫は違法となります。たとえば、
- 実物よりもきれいで豪華な完成予想図を掲載する
- 本当は2LDK+納戸なのに3LDKと表記する
- 物件の前にある電線を消した写真を表示する
などです。
ありのままの姿を掲載しなければいけません。
その他表示に関するルール
他にも、
- 二重価格表示の禁止
- 特定事項の明示義務
- 間取りの表示基準
などがあります。
たとえば、安さを強調するために「期間限定!今月末までのご成約で賃料15万円→13万円」などと実際の賃料よりも高い価格を併記するような方法は違法です。
また、ロフト付きのマンションで、そのロフトが部屋として使えるくらいの広さがあったとしても、ロフトは居室として認められていないので居室として表示をすると違法になります。
ここに気をつけて!不動産広告の違反例
では、どのような広告が違反となってしまうのか、首都圏不動産公正取引協議会の資料をもとに、実際に違反となった事例をご紹介します。
おとり広告
おとり広告とは、契約済みや貸す意思のない物件をポータルサイトなどに掲載し、広告を行うことです。
お客様が広告を見て「この部屋を見たい」と問い合わせるとその物件は既になく、他の物件を紹介されたりします。違反の中でも最も多い部類ですから気をつけたいところです。
ここで注意が必要なのは、契約手続きが済んだにもかかわらず、ポータルサイト等から削除し忘れた場合です。速やかに削除しましょう。故意ではなくても、結果としておとり広告になってしまえば、処分の対象となります。
不当表示の例
新築物件とは建築後1年未満で、一度も人が住んだことのない物件のことを指します。どんなにきれいでも、1年を経過してしまえば「新築」と表記することはできません。
また、DK、LDKの広さは目安があり、形状も決められています。
居室数 | 1部屋 | 2部屋以上 |
---|---|---|
DK(食堂+居室) | 4.5畳 | 6畳 |
LDK(食堂+居室+居間) | 8畳 | 10畳 |
たとえどんなに広いキッチンだとしても、居室が併存していなければ「K」と表記しなくてはなりません。
まとめ:不動産広告のルールを守って広告を作ろう
不動産広告には宅建業法、景表法、不動産の表示に関する公正競争規約などによって守るべきルールが定められています。このルールを守っていない広告を掲載してしまうと、大きなペナルティを課されることがあります。
注意すべきは、それが故意かうっかりミスかは関係ないということです。法に反した以上、「知らなかった」といっても通りません。また、実際に借主に被害が出たかどうかは問題ではなく、違法な広告を出稿したということで処罰の対象となりますので気をつけなくてはならないのです。
おとり広告や不当な表現によって警告を受けるケースが出ていますので、広告の表現には十分注意し、お客様に誤解を与えない広告を心がけましょう。