賃貸不動産経営管理士とは?仕事内容や資格取得のメリット
賃貸不動産経営管理士という新しい国家資格は、その名の通り賃貸不動産を管理するのが仕事です。まだ国家資格に昇格してまもない資格なので、どんなことができるのか知らない人も多いのではないでしょうか?
賃貸不動産経営管理士ができる仕事、資格の取得方法や今のうちに取得しておくことのメリットなどについて詳しく解説します。
不動産業界はもちろん、賃貸物件のオーナーが取得しておいても損はしない資格です。
目次
賃貸不動産経営管理士とは賃貸住宅管理の国家資格
冒頭でもお話しした通り、賃貸不動産経営管理士は賃貸住宅を管理するための国家資格です。資格自体は2008年から試験がありましたが、2021年に国家資格になりました。
賃貸不動産経営管理士が国家資格になった背景
賃貸不動産経営管理士は、単に物件を管理するだけでなく、貸し手の資産を守り、借り手の安全を確保するという重要な責務があります。
このような資格が生まれた背景のひとつにサブリース問題があります。サブリース契約とは管理業者がアパートなどの賃貸物件を丸ごと借り上げ、入居者と直接契約を結ぶ代わりに、オーナーには一定の家賃を保証するというものです。
このサブリース契約をめぐってトラブルが多発し、国会でも取り上げられるほどの社会問題となりました。
その後、このようなトラブルを解消すべく賃貸住宅に関する法整備が進み、専門知識と高い倫理観を持った賃貸不動産経営管理士が、国家資格として賃貸住宅の管理に重要な役割を果たすようになったのです。
業務管理者になるために必要な資格
2021年、「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(賃貸住宅管理業法)」が施行され、一定の管理戸数を持つ管理業者は、各事業所に1人以上の「業務管理者」を設置しなくてはならなくなりました。
賃貸不動産経営管理士は、この業務管理者になるための要件のひとつとなっています。ちなみに現在は宅地建物取引士も一定の講習を受けることでこの業務管理者になることができますが、将来的には賃貸不動産経営管理士に一本化される可能性があります。
管理会社で仕事をするなら、合格率が比較的高い今のうちに、資格を取得しておくことをおすすめします。
賃貸不動産経営管理士の役割は賃貸物件の管理監督
では、賃貸物件の管理とは具体的にどのようなことを行うのでしょうか。賃貸不動産経営管理士の仕事内容について説明します。
入居者募集など入居前の業務
- 市場調査
- 賃貸物件の企画立案
- 入居者の募集
- 敷金、礼金、家賃の受領
- 賃貸借契約
オーナーと管理業務の委託契約を結んだら、入居者の募集を行いますが、その前に適切な家賃を設定するための市場調査、魅力的な物件にするための企画立案なども行います。
また、入居者を集めて満室にすることも業務の一つですが、この時大事なのが入居者の審査です。家賃を滞納するような人では困りますし、他の入居者とのトラブルも防がなくてはなりません。
身元がしっかりしていて家賃をしっかり払ってくれる人なのかどうか、チェックするのも賃貸不動産経営管理士の仕事です。
賃貸物件の管理業務の内容
- 物件の管理業務
- 法令で定められた点検作業の指揮監督
- 毎月の家賃受領に関する業務
- 契約の更新
- 賃料の改定
- 空室対策
- 敷金の精算
- 原状回復工事
ここからが、賃貸不動産経営管理士の仕事の本番です。日々の管理業務はもちろん、契約の更新や賃料の改定に関する業務も行います。
また、退去の際の手続きも大切な仕事のひとつです。入居前から退去する時まで、包括的に賃貸物件に関わっていく仕事だということがおわかりいただけたでしょう。
これから賃貸不動産経営管理士になるメリット
賃貸物件がなくなることはありません。むしろこれからは増えていくことも予想されるので、安定的に仕事を得られる資格であるといえます。
管理・経営の専門家として期待されている
国土交通省の「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律について」という資料によりますと、1990年代は、まだ自分で物件を管理しているオーナーが多く、管理業者に物件の管理を任せているのは1992年時点で25%程度でした。しかし2019年には82.5%まで上昇したのです。
最近では日本でも投資目的で不動産を所有する人が増えてきていますが、それでも海外のオーナーとは違い、「親から相続した物件だから」「先祖伝来の土地をそのままにしておくのはもったいないから」という理由で賃貸経営を始める人がほとんどです。
つまり、経営学や法律などの知識を身につけることなく賃貸経営を始めるため、結局は管理会社に丸投げしてしまう人が多く、その中でサブリース問題などが出てきました。
賃貸不動産経営管理士は管理だけでなく、経営面についても幅広い知識を持っていますから、物件を適切に管理し安定的に収益を上げていくためにも、オーナーにとって不可欠な存在になるでしょう。
今後もニーズが高まる資格
昔は「結婚したらマイホーム」というのが定番でしたが、最近では結婚しても子供を持たず、夫婦2人で賃貸に住み続ける人も増えています。
また、生涯未婚率も上昇していることから、家を買うよりも借りる方が主流になっていく可能性が高いです。賃貸不動産経営管理士は「物件の適切な管理ができる専門資格」ですから、今後も需要がますます高まると考えられます。
これからオーナーになる人にも役立つ資格
自分自身が賃貸物件のオーナーであるという人にとっても、取っておいて損のない資格です。管理や経営に関する知識が身につくので、人に丸投げして細かいことは何もわからない、という事態を防げるでしょう。
空き室を少なくし収益を安定させるためにも、きっと役立つ資格です。
空き家の活用にも期待されている
日本では年々空き家が増えていることが問題になっていますが、賃貸不動産経営管理士は、空き家の活用でも重要な役割を担うことが期待されています。
先ほども説明した通り、賃貸不動産経営管理士の仕事は人が住んでからの管理業務だけではありません。
賃貸経営の支援もできるわけですから、空き家を魅力的な物件にリノベーションしたり、収益化する方法についてアドバイスしたりすることで、取り壊すしかなかった空き家も有効活用できるようになります。
賃貸不動産経営管理士にとっては仕事が増えるチャンス、オーナーにとっては不労所得が増えるチャンス、空き家の活用は双方にメリットのあることなのです。
賃貸不動産経営管理士になるには
賃貸不動産経営管理士の試験は年に1回行われています。学歴も実務経験も不問なので、誰でも受験できます。学生のうちからチャレンジしている人もいますし、いずれ仕事をする時に備えて受験している主婦の人もいます。
ただし、試験に合格しただけでは仕事ができないので注意してください。その試験に合格し、賃貸不動産経営管理士として登録することで国家資格が得られます。登録するには、2年以上の実務経験があるか、実務講習を終了していることが条件です。
登録後は登録証、ステッカーがもらえますので、お客様に資格をアピールすることができるようになります。任意ですが、貸不動産経営管理士のウェブサイトの名簿に名前を載せることができるので、お客様から見つけてもらうことも可能です。
まとめ:賃貸不動産経営管理士は幅位広い知識を活かせる国家資格
賃貸不動産経営管理士は、賃貸物件の管理だけでなく入居者募集から退去時の原状回復まで、トータルでオーナーのサポートをするのが仕事です。空き室対策や魅力的な物件づくりの企画立案なども行い、賃貸経営の収益化にも力を発揮します。
法令によって一定規模以上の戸数を持つ管理会社は業務管理者をおくことが義務付けられており、賃貸不動産経営管理士は業務管理者になれる資格の一つです。
現場で専門知識やスキルを活かせる国家資格ですので、不動産に携わる方は是非、取得を検討してみてください。