賃貸物件を法人契約するメリット・デメリット、契約時の注意点など

 賃貸仲介業 2022.05.09

賃貸の法人契約とは、個人ではなく法人名義で契約をすることです。法人契約の目的は社員に住む場所を提供するためで、家賃を補助したり、社宅として会社が借り上げて住まわせたりします。

法人契約をする場合は、個人で契約する時と揃える書類が違ってきますし、手続きの方法も違います。審査にかかる時間も違ってきますので、法人契約の物件を探す前にどのような流れで進むのかを知っておいた方が良いでしょう。

そこで今回は、賃貸物件を法人契約する時の手続きや書類、そしてメリットやデメリット、注意点などについて詳しくまとめました。これから法人契約で物件探しをしようと思っている方は、ぜひ参考にしてください。

賃貸物件の法人契約とは?

賃貸物件を契約する時、通常はそこに住む人が個人で契約をします。法人契約とは、個人の代わりに企業が契約者になることです。つまり、借主の名義が法人になります。

賃貸の法人契約には大きく分けて2つあります。

  1. 福利厚生の一環で会社が家賃補助をする場合(契約者は会社、住むのは社員)
  2. 個人事業主などが事務所兼自宅として法人名で契約する場合

今回は、1.の法人契約について解説します。

個人契約と法人契約の3つの違い

個人契約と法人契約は何が違うのでしょうか。審査の内容や提出する書類など、おもに3つの違いがあります。

会社の経営状態が審査される

個人で入居するときには、

  • 勤め先
  • 年収、勤続年数
  • 信用情報(ローンの返済状況等)

などが審査されます。 法人契約をする場合には、

  • 事業の内容
  • 事業年数
  • 従業員数
  • 資本金
  • 売り上げ

などが審査されます。

もちろん、経営状態が黒字であるほうが審査には有利です。

個人事業主が審査を受ける場合には、事業計画書や決算報告書などが必要となる場合もあり、企業よりはやや審査が厳しめになる傾向があります。

提出書類の多さ

個人で契約する場合、現在の住民票や源泉徴収票など所得を証明する書類と身分証明書があればOKです。

法人になると、格段に書類の数が多くなります。

  • 会社登記謄本
  • 会社案内・会社概要(パンフレットなど)
  • 決算報告書(3期分)

など、指定された書類を用意します。書類の詳細については、後ほど説明します。

費用負担の違い

個人で契約するときには、敷金・礼金などの初期費用も全て自分で負担します。法人契約の場合は、会社の規定によって違いがありますが、初期費用を全額会社が負担してくれる場合もあります。

賃貸の法人契約の大まかな流れ

法人契約はどのように手続きするのか、その流れについて説明します。会社が社宅として借り上げている物件であれば入居者個人がすることはあまりないのですが、家賃負担をしてもらう場合には、家探しからしなくてはなりません。

物件探し

物件の探し方は、個人で探す時と基本的には同じです。ポータルサイトなどを使い物件を探します。

ただし、法人契約をしている企業は不動産会社と提携している場合もあるため、そのときは決められた不動産会社で探すことになるでしょう。

申し込み

良さそうな物件を見つけて「ここがいい」と思ったら、申し込みは個人で行います。借りる名義は会社になりますが、会社が申込みからやってくれるわけではありません。申し込み自体は住む本人がしなくてはならないのです。

申込書には名義人の欄に会社名を記入します。手続きの時には住む本人の身分証明書と印鑑が必要になることが多いので、念のため持っていってください。

契約に必要な書類

申し込みが済んだら、契約に必要な書類のやりとりは会社がやってくれるでしょう。求められる書類は、以下の通りです。

  • 会社の登記謄本
  • 決算報告書
  • 会社の資本金がわかるパンフレット等
  • 法人納税証明書
  • 法人の印鑑証明書
  • 入居者本人の身分証明書
  • 入居者本人の住民票
  • 社員証のコピー

これらの書類を郵送によってやりとりし、手続きを進めていきます。大企業の場合は印鑑証明書などが不要になることもあるようです。

入居審査

書類を送ったら審査を待ちます。名の知れた会社、事業内容がわかりやすい会社は審査で落ちることはあまりなく、結果の連絡も早いでしょう。

起業してまもない場合や、決算報告書の内容に問題ありと判断された場合には審査に通らない可能性もあります。もしくは、保証会社に入ることを求められたり、代表者が連帯保証人になることを求められたりすることもあります。

契約、入金

無事に審査を通過したら、いよいよ契約です。契約手続きも会社の方で行うことが多いため、基本的には入居者がすることはありません。この間に、引っ越しの手続きなどを進めておくと良いでしょう。

ただし、敷金・礼金など初期費用が折半や一部負担になっている場合、振込はどちらがするのか確認しておく必要があります。全て会社負担であれば、基本的には入居者本人がすることはありません。

賃貸の法人契約のメリット

個人で契約するよりも法人名義で契約すると、このようなメリットがあります。

家賃負担が少ない

個人で契約すれば、家賃はもちろん敷金・礼金なども全て自己負担です。契約時には家賃の5〜6ヶ月分を用意しておく必要があります。

その点、法人契約なら家賃も少なくて済みますし、初期費用を全額会社が負担してくれる場合もあり、負担がかなり減るでしょう。

個人よりも審査に通りやすい

会社の規模にもよるのですが、名の知れた会社や経営状態の良い会社であれば、個人よりも信用度が高いので審査に通りやすいというメリットがあります。特に外国籍の社員など賃貸契約で敬遠されがちな場合は、法人という立場が審査をスムーズにしてくれます。

賃貸の審査は、「家賃を払う能力があるか」という点を重視しますので、いつ仕事を辞めるかわからない個人より、法人の方が信頼されるのは当然のことでしょう。

契約手続きの手間が少ない

個人で契約する場合、審査のために書類を揃えたり、契約書にサインをしたりさまざまな手間がありますが、法人契約なら申し込み以外の手続きは全て会社がやってくれます。自分一人で手続きするよりも楽です。

会社の節税対策になる

社宅として住居を提供する場合、家賃負担額を経費として計上できるため会社の節税対策になります。

また、住宅手当として支給すると「給与」になってしまいますが、社宅扱いなら給与ではないため額面上の給与が減ります。その分社会保険料や所得税、住民税の減額にもつながり、社員にも会社にも双方にとってメリットがあります。

賃貸の法人契約のデメリット

お金も節約できて、手続きも簡単な法人契約ですが、デメリットがないわけでもありません。

敷金・礼金が高くなる可能性

社宅として借り上げる場合、不特定多数の人が利用することを警戒し、敷金・礼金を通常よりも高く設置する貸主もいます。敷金は退去時に一部戻ってきますが、礼金は戻ってきません。

会社がどのくらい負担してくれるかその割合にもよりますが、全額負担してくれない場合は初期費用が高くつく可能性もあります。

契約手続きに時間がかかる

会社が契約手続きをしてくれるので個人の手間は少ないのですが、それは早いという意味ではありません。提出する書類が多いため、審査にも時間がかかるのです。個人での手続きと同様に考えていると、入居時期に間に合わないこともあります。

入居を急ぐ場合には、不動産会社と会社の担当者双方にその旨を伝え、希望する期日までに手続きが完了するか、事前に相談しておくことをおすすめします。

身の丈に合わない家賃でも審査に通る可能性

企業の知名度が高いほど、審査はスムーズに通過するでしょう。個人で契約するなら審査通過が難しかった家賃の物件でも通ってしまう可能性があります。いくら補助が出るとはいってもその家賃で生活が成り立つのか、毎月の収支をよく考えて物件を選ぶことが大切です。

賃貸の法人契約で注意すること

物件探しをする前に、いくつか注意して欲しいことがあります。いざ申し込みをしたら契約のできない物件だった、ということがあるからです。

社内規定を事前に確認しておく

社内規定で借りられる物件に制限がある場合があります。どのような物件でも借りられるわけではないので注意しましょう。 例えばこのような物件をNGとしている規定があります。

  • 木造建築
  • 築年数が○年以上
  • 短期解約違約金が発生する物件
  • セキュリティ面で不安がある物件

社内規定を確認せずに物件探しをすると、せっかくいいと思って決めたのに契約ができず、時間が無駄になってしまいます。

負担してもらえる家賃には上限がある

敷金・礼金などの初期費用は全額負担してもらえる場合がありますが、家賃は上限が決まっている場合が多いです。金額を確認しないで契約してしまうと、思いの外出費が多かったということもあるので、事前に確認しておきましょう。

まとめ:賃貸の法人契約は時間はかかるがメリット大

賃貸の法人契約とは、個人の代わりに会社名義で契約することです。そろえる書類も個人と比べると多いですし、審査にはやや時間がかかりますが、それでも個人で借りるよりもメリットがあります。

申し込み自体は個人で行いますが、契約手続きは会社がやってくれます。その分、自分がやることは少なく、手間がかかりません。また、名の知れた会社なら審査もスムーズに通るでしょう。住宅手当として支給するよりも節税効果が高いので、会社にとってもメリットがあります。

ただし、借りられる物件に制限がある場合がありますので、社内規定をよく確認してから物件探しをすると良いでしょう。